ごきげんなぞうくんがお散歩に出かけるお話。
いい天気でいい気分ぞうくんが、散歩に出かけるとかばくんに出会い、一緒に散歩しないかと誘います。
するとかばくん「せなかにのせてくれるなら いっても いいよ」と言い放つのです!
もし自分が言われたら「はぁ…じゃあいいです」ってなっちゃう…かばくんが人間だったら、わたしは友達にはなれないタイプ。
そんなかばくんの提案を、ぞうくんは二つ返事でOKしちゃいます。
優しいな〜そしていい天気でごきげんになれるとうのも尊敬だな〜自分ならよい気分でないと天気も褒められないんだもんな〜脱線なんだな〜(笑)
でもこの後ぞうくんは大変なことに…きっとぞうくんでも、ちょっぴり後悔した瞬間があったのではないでしょうか。
もちろん最後は絵本らしいオチがついていて、笑ってしまうこと間違いなし!
ルンルン気分なはずのぞうくんの顔が、ずっと同じなのも面白いです。
ところで、この絵本の作者のところには”さく・え”とは別に”レタリング”という耳慣れない担当の方が紹介されていました。
初耳でしたので、調べてみたら…この絵本のスゴさがもっとわかりましたので、ご紹介します。
文字に意思を持たせる
ものすごーくざっくり、そして現代についてのみで言えば、レタリングとは”自分の表現内容にあわせた新しいロゴ・フォント作り”のこと。
割ときちんと言うと、デザイン用語のひとつで”文字を書くこと”を意味していて”書く文字を美しく、かつ表現内容を効果的に表すため”に立てる計画や活動、また書かれた文字そのものをレタリングと言うそう。
書道などの伝統的な書き文字から、明朝体やゴシック体など印刷用の書体設計を指すタイプフェイスデザイン、商品名など特定の文字の組み合わせを効果的にデザインするロゴタイプデザインなどを指します。
つまりレタリングというのは、自分が伝えたい何かを、より強く受け手に伝えるために文字にも意思をもたせる技術とも言えそうです。
加えて、かつては特定の看板といった複製を必要としないものに対して、筆を駆使して優れた文字を書き写すことをいいましたが、最近ではデジタル文字をプリンタで出力する方法が普及しています。
そのため、レタリングの概念そのものが、印刷を前提としたロゴタイプデザインやタイプフェイスのデザインに特化した概念となりつつあるようです。
ということで、最初にお伝えしたように今のことだけ簡潔に言うならば、レタリングとは”自分の表現内容にあわせた新しいロゴ・フォント作り”になるのかなと思います。
しかし、そこで生まれた疑問は「この絵本のレタリングはどうやったのか?」ということ。
この絵本が福音館書店の月刊誌『こどものとも』に掲載されたのは1968年です。
一方、日本におけるパソコンの普及については、1977年に精工舎(現セイコー株式会社)が国産初となるマイコン(パーソナルコンピュータの原型と言える型のコンピュータ)を発売。
ワードプロセッサ(以下ワープロ)についても、1978年に東芝が初めてワープロ専用機を発売し、1980年代中頃に普及しました。
ということは、この絵本作成時にはパソコンもワープロも普及しておらず、手元になかった可能性が高いです。
手書きや版画…なのでしょうか…確かによく見ると同じ”なかの”でも微妙に違う!
恐ろしい!(笑)
すごすぎて!
絵本作者のなかのひろたかさんとレタリングのなかのまさたかさんは実のご兄弟ということで、兄弟の絆も感じる作品です。
この絵本の文字には、シンプルながらもどこかちょっと不思議な、でもやっぱりかわいらしいという印象を持ちます。
だから、この絵本は完璧にしあがっているんだと感じられるはずです。
ぞうくんだけ
ぞうくんのお散歩は、ひとりから始まり、かばくん…わにくん…とどんどん参加者が増えていきます。
だんだん人数が多くなって楽しそう!
ただ、ぞうくんだけは「うん うん、おもいな」や「うん うん、おもいぞ」というセリフからも分かるように楽しいばかりではなさそうです。
みんなのことをぞうくん自身が散歩に誘っているので、誰のことも責められないのですが…
そんなぞうくんの変化に気づく手段は「おもいな」というようなセリフしかありません。
なぜならぞうくん、顔がぜんぜん変わらないんです!
最初のごきげんな様子から、かばくんやわにくん達をお散歩に誘っているところ、ちょっと辛そうなシーンまですべて口角下がってます!
動いているのは、黒目だけ。
本当に楽しいのかなと心配になってしまうレベル(笑)
しかし!20ページ以降は表情からぞうくんの気持ちが捉えやすくなります!
20ページ以降の絵から想像するぞうくんの心の動きは”ビックリ→ちょっと楽しい→楽しいの隠すために申し訳ないふりしなきゃ→楽しんでいる”というものではないでしょうか。
そしてその20ページからオチに入っていくのですが、ほんと最高です。
まず絵の色合いや動物たちの描かれ方、文章とその書体に至るまですべてがかわいらしい。
最初からオチ前まではずっと会話のみでお話が進んできたのですが、それがオチのところでは急に第三者目線で冷静に状況説明されることでついプッと笑ってしまう。
読めば、癒やされて、あぁお散歩に行こうかなと思わせてくれる絵本です。
笑って疲れを吹き飛ばすためにもぜひ読んでみてください!