ねこたちは夜、どんな景色をみているのかを”夜の冒険”を通して描いた絵本です。
わたしたち人間は明かりがなければできない、夜の冒険。
そんな夜の冒険をこの絵本ではまず、建物などを黒いシルエット、背景の暗闇を青色で描くことでねこが暗闇を歩いている様子が描かれます。
そして、次のページでは前のページで描かれた暗闇とまったく同じ構図で色のカラフルな”ねこの目”パターンが登場。
真っ暗闇だと思っている夜の景色は「ねこたちにはこう見えているのか!」と改めて感じることができる一冊です。
昼間わたしたちが見ている景色の中にも花や蝶、動物たちは同じように居ます。
でも、青空の下ではなく、背景が黒いと印象が全く違う!
「一度でいいから自分の目でその景色を見てみたい」と感じずにはいられないとても美しい絵本です。
絵は油絵でしょうか、絵の具をベタッと塗ったようなはっきりとした色が使われており、色彩がほんとうに綺麗。
色を楽しむにはもってこいなのですが、ページめくりには注意してください。
うっかりページを飛ばしてめくってしまうと、先にねこの見え方がわかってしまい、ちょっと残念な気持ちになってしまうからです。
しかし、少し慎重になってでも読む価値あること間違いなし!(笑)
こんなにも美しい絵を描くダーロフ・イプカーさんは、一体どのような家庭で育ったのでしょう。
また、名前からとても美しい顔を想像してしまう、翻訳家光吉夏弥さんについても取り上げたいと思います。
あの名作も!
作者のダーロフ・イプカーさんは、アメリカ出身の女性。
父親が彫刻家のウィリアム・ゾラックさん、母親が画家のマルグリット・ゾラックさんという「お絵描き教室には習いに行かなくて大丈夫ですね」という家庭で育った方です。
彼女は30冊を超える絵本などを著書に持つ”絵本作家”であると同時に、本格的な”画家”としても活躍されており、画家としての作品はメトロポリタン美術館などに収蔵されています。
デビュー作は『小さいりょうしさん』(文:マーガレット・ワイズ・ブラウン)で、クリスマスの時期に必ず目にする『わたしのすてきなクリスマスツリー』も彼女の作品です。
翻訳を担当されている光吉夏弥さんは、佐賀県出身の男性。
毎日新聞社にお勤めされ、舞踊・写真評論家や絵本研究家、絵本翻訳家といった様々な顔を持つ方です。
この『よるのねこ』の翻訳もとても丁寧で、言葉のチョイスや間が素晴らしいな〜と思います。
例えば絵本の中には「ニャオ、ニャオ、うらがなしい ねこのうたを うたうのも います」という文があり”うらがなしい”の部分から夜の少しさみしい雰囲気や、間があいていることで時間がゆっくり流れているように感じることができます。
そんな光吉さんは、なんとあの『ちびくろ・さんぼ』の翻訳を手がけた方!
名作中の名作を…すごい!!
また大人気の『おさるのジョージ』シリーズのもとになった『ひとまねこざる』シリーズの翻訳も光吉さんがご担当です。
全ページ額に入れて飾ってもいいほど、美しい
この絵本は、本当に色が美しいです。
ねこ目線のページはもちろんですが、人間目線の暗闇のページもとても綺麗。
黒いシルエットが映える薄い群青のような青色に、星や窓の光は白で描かれます。
そして「黒いシルエットには何が描かれているのだろう」と、想像してから次のページをめくり、正解を確認する。
そんな一連の流れも楽しめる素晴らしい絵本です。
もちろん文章もとても素敵ですし、最後のオチも思わずニコニコしてしまうバランスの良さ!
ほんとうにオススメです。
個人的にねこが夜に冒険するのは、夏が多いのかなと感じていまして…もしかしたら冬にも余裕で冒険しているかもしれないのですが…
しかし!夏の夜にはねこの目撃回数が増えることは確かなので、ぜひ夏に読んでほしいなと思います。