この街に住んだら太りそう『まよなかのだいどころ』さく:モーリス・センダック/やく:じんぐうてるお(冨山房)

まよなかのだいどころ 《hungry》食欲をわかせたいとき
画像出典:冨山房

ものごとをはっきりと言う少年ミッキーに突然訪れた”おいしい冒険”の物語です。

あらすじ

真夜中に聞こえたうるさい音、寝ていたのに起こされてしまったミッキーはカンカンになって怒鳴ります。

すると、はだかんぼうのまま”まよなかのだいどころ”へ飛んでいき、ケーキのミルクと間違えられてしまうというドキドキする始まり方です。

街の一角にある大きな台所が舞台で、3人のオジサマ達が楽しそうにケーキを作っています。

ミッキーはちょうど台所のボウルの中に降りたので、そのまま混ぜられオーブンに向かい…「ヤバイ!」となりますが、さすがミッキー「ぼくとミルクをまちがえるなよ」とピシャリ。

その時のひとりのオジサマの顔が、ひどく不機嫌で笑えます。

そもそもこのオジサマ達、三等身くらいでかなり面白いフォルムなのでたいへん愉快です。

また、舞台の台所は青空キッチンと言いますか、すごく開放的で外がよく見えるようになっており、その景色がすごく素敵!

とても大きないちごジャムの瓶型や生クリームのパック型など、食べ物と関連したものの形をしたビルがたくさん並んでいて可愛らしいです。

更に、泡立て器や栓抜き型の煙突を超えたところには、星空が広がっているという、まさしく”まよなかのだいどころ”になっています!

「ケーキが作れない」と困っているオジサマの為に天の川までミルクを取りに行くことになったミッキー、その様子が絵本ならでは、台所ならではの可愛らしいファンタジーになっていて、見ていて楽しいです。

無事にミッキーがミルクを取ってくれたので、みんなの朝ごはん用ケーキが作れることがわかると、やっぱり自分の朝ごはんのことも考えてしまう…

「たまには朝、食パン意外も食べようかな」などという考えがうまれ、だんだんお腹がすく絵本、その著者はモーリス・センダックさん。

センダックさんと言えば、映画化もされた大人気絵本『かいじゅうたちのいるところ』の作者です。

そんな面白い絵本をたくさん描かれている方は、どんな面白おじさんなのかと思ったら…かなりスゴイ人物でした!

詳しく見ていきましょう。

ちょっと強面

モーリス・センダックさん

モーリス・センダックさんは、ニューヨーク出身の男性。

2012年に83歳で他界された、20世紀を代表する絵本作家のひとりです。

仕立て屋の息子として生まれた彼は、服ではなく絵に携わるようになり、次第に絵本の世界へ。

センダックさんは、1964年の”コルデコット賞”受賞をはじめ、1970年には長く子どもの本に貢献してきた現存の作家さんや画家さんから候補者が選ばれ、その候補者たちの今までの全業績によって選ばれる”国際アンデルセン賞画家賞”も受賞。

そして、1983年に全米図書館協会による児童文学賞”ローラ・インガルス・ワイルダー賞(現:児童文学遺産賞)”を受けています。

更に!!日本で言う紫綬褒章のようなものでしょうか、アメリカ文化に素晴らしい功績を残した芸術家や学者などに政府から贈られる”国民芸術勲章”を1996年に授与されるというなんとも素晴らしい経歴の持ち主です。

著書について

著書には『まどのむこうのそのまたむこう』や『ロージーちゃんのひみつ』などなど。

たくさんある著書の中で、いちばん有名な作品はやっぱり『かいじゅうたちのいるところ』ですね。

『かいじゅうたちのいるところ』は1964年に、アメリカでその年に出版された最も優れた子ども向け絵本に授与される賞である”コルデコット賞”を受賞、そして2009年(日本では2010年)に実写映画化もされました。

また、児童文学作家の兄、ジャック・センダックさんと『The Happy Rain』や『とてもとてもサーカスなフロラ』を共作されています。

ちなみにセンダックさん、こんなに面白い絵本を作っているのに…写真で見るかぎり…ちょっと強面…そんなギャップもよいです(笑)

企業が欲しがる人材?!

この絵本は、ミッキーがほんとうにしっかりしていて驚きます。

ミルクと間違えられて、冷静に注意するところや、パン職人さんの「ミルクがなくて困っている」を解決する方法を瞬時に思いつき実行するところなども「この頭の回転スピードとフットワークの軽さがあれば、どこの企業も欲しがる人材だ!」と思ってしまいました。

ミッキーは子どもだけど、子どもなだけではなく、お話も誰かに助けてもらう設定ではなくて、自分ひとりで問題を解決していきます。

お話はすごくファンタジーにまとめられていますが、こういう機転をきかせて問題を解決する姿を見ていると、面倒なことから逃げるクセがついてしまった自分を反省。

そんな日常の過ごし方を考えさせられる絵本でもあります。

しかし、一方でツッコミどころも満載。

ミッキーが台所に降りて来たとき、嬉しそうな顔してたな〜と、こんなおかしな出来事が起きているのにミッキーの表情が落ち着きすぎているところや、意外と天の川近かったんですね〜という距離感、街に建っているビルの文字など、ツッコまずにはいられません!

わたしが一番気になったのは、ミッキーが天の川に到着した見開きページに出てくる旗。

揺れるピンクの旗には”チャンピオン”と書かれています。

プロレス会場?

気になります。

全て何らかの食品関係ブランドかもしれないですが、日本語にすることでちょっと不自然な感じがして面白いです。

この絵本を読んで、ぜひ皆さんも”まよなかのだいどころ”を堪能してください。