かわいらしい”つきのぼうや”がおつきさまのお願いごとを叶えるまでの道のりを描いた絵本です。
丸くて立派なおつきさまが夜空にのぼると、池にもうひとりおつきさまを発見。
「それって…?」という疑問はひとまず置いておいて、お話はおつきさまがつきのぼうやに「池のおつきさまと友だちになりたいから、連れてきてほしい」というお願いをするところから始まります。
つきのぼうやはそんな無茶ぶりに対し「はい、いってまいります」とすぐさま了承し、池へ向かって出発です。
池までの道中で色々な”おつきさまっぽいもの”に遭遇したり、かわいくて可笑しなハプニングに見舞われます。
そんなつきのぼうやの姿を見ていると思わずニッコリ。
母でなくても母性がくすぐられる(笑)
月のぼうやのお母さんになったつもりで、この無茶なお使いがどう終わりを迎えるのか心配しながらを読み進めていくと、めちゃくちゃ納得できる終わり方してくれます。
「その手があった!どっちの目線から見ても不自然なところがないし、すごい!」と感動すらしてしまう…
そんな誰もが納得してしまう素晴らしいお話を描かれているのは、どんな方なのでしょうか。
そう言えば、十五夜っていつだっけという素朴な疑問についても解説していきます。
十五夜は毎年違う日だった!
作者のイブ・スパング・オルセンさんはデンマーク出身で、10年教師として働いた後に子どもの本のイラストや絵本制作などに専念された方。
2012年に他界されるまで児童書や小説のイラストを約600冊も描かれており、デンマークでは知らない人はいないという国民的芸術家です。
2018年に角野栄子さんが作家賞を受賞された”国際アンデルセン賞画家賞”を1972年に受賞、また1976年に”インダストリアル・グラフィックデザイン賞(現デンマーク・デザイン賞)”などの受賞歴を持たれています。
著書には『はしれちいさいきかんしゃ』(福音館書店)や『アンデルセンの自伝 わたしのちいさな物語』(あすなろ書房)『かぜ』『あめ』(亜紀書房)などなど。
そんなデンマークの偉人、イブ・スパング・オルセンさんが作られた月のお話はぜひ秋の”十五夜”の時期に読んでほしいです。
外国の絵本なので、お月見がテーマというわけではないのですが、読めば月を見上げたくなりますので1年の中で月がいちばん美しく見れる秋がオススメ。
ところで”十五夜”とは、いつなのか覚えていますか。
わたしは、スーパーにお団子が並んでいるのを見て「おや、今日はお月見なのだな」と思うだけでいつなのかわかっていませんでした。
十五夜とは、旧暦の8月15日の満月のことで、中秋の名月とも呼ばれます。
“秋の真ん中に出る満月”という意味で、旧暦で8月は秋のちょうど真中であり、8月15日の夜に出る満月ということで、そう呼ばれるようになったんだそう。
今の暦ですと”9月7日から10月8日の間に訪れる満月”の日を十五夜や中秋の名月と呼ぶとのこと。
つまり、毎年日付が変わるんですね!
知りませんでした…恥ずかしい(笑)
なにはともあれ、意外と知らない日本の行事について調べる機会も作ってくれるという、なんとも素敵な絵本です!
仕掛けを感じる
この絵本は、とても不思議な形の絵本です。
縦の長さが34cmで横の長さが12.6cmという大きさで、ものすごく縦に長い!
そしてこれが、つきのぼうやが空から池に向かって降りていく様子が感じ取りやすくなっています。
また、最初と最後の見開きの絵が左右対称になっているのも、おつきさまにできた友だちのことを指しているのかな〜などというように絵本に施されている仕掛けを感じ取ることができて、楽しい。
絵は、色鉛筆中心の優しい絵です。
ちなみにいちばん癒やされる絵は、つきのぼうやが池に向かって出発する時に、うっかり蹴飛ばしてしまった星の顔。
「そんな顔になるよね!」と思いつつ、結局その星がながれ星になるという設定まであり、やっぱり素敵だな〜とニコニコしてしまいます。
直接的な十五夜のお話ではありませんが、ぜひ秋のお月見の時期に『つきのぼうや』を読んでみてください。