どの世代も惹きつけられる『ちいさな島』作:ゴールデン・マクドナルド/絵:レナード・ワイスガード/訳:谷川俊太郎(童話館出版)

ちいさな島 《blue》悲しくなりたいとき
画像出典:童話館出版

ちいさな島では何が起こっているのかを描き”ちいさな島でいること”の素晴らしさを語っている絵本です。

この絵本では、ちいさな島の置かれている気象状況や魚や鳥たちとの関わり方、そしてそのような状況が時間の経過とともに変化していく様子が描かれています。

つまり、いわゆる主人公がいて、ページをめくることで新しい展開を迎え、最終的になにかしらの結末があるというタイプのお話ではありません。

もちろん主人公は”ちいさな島”になるのでしょうが、自分自身で”ちいさな島”は何を表現しているのか、作者は何を伝えたいのかなどを考える必要がある絵本です。

基本的に単細胞なわたしは、こういった自分で考える必要性のある読み物に苦手意識があります。

しかし、この絵本は言葉がどれもこれも素敵で、読みたいと思ってしまう!

更に、中盤で登場するちょっと意地悪な”こねこ”がこの絵本が表現していることのヒントを与えてくれ、比較的想像しやすかったです。

そして、なぜかこの絵本を読んでいると、無意識で涙が出そうになります。

あまりにも自分からはかけ離れた美しい言葉を読んでいて、切ないためなのか。

自分自身に置き換えて、かなり感情移入したがための思い出し泣きなのか。

もしかすると、ただ年をとって涙腺が緩んでいるためかもしれないですが、ちょっとblueな時だとより感じ取るものが多いのではないかと思います。

さてそんなつい泣いてしまう絵本は、どんな方が作っているのでしょうか。

詳しくご紹介していきます。

天才たちが作った絵本

この絵本は、1947年にアメリカでその年に出版された最も優れた子ども向け絵本に授与される賞である”コルデコット賞”を受賞しています。

ほんとうに美しい言葉で埋め尽くされた絵本『ちいさな島』の作者はアメリカ出身の女性、ゴールデン・マクドナルドさん。

この名前は知らないという方でも”マーガレット・ワイズ・ブラウン”という名前なら知っているかもしれません。

実は”ゴールデン・マクドナルド”という名前は、マーガレット・ワイズ・ブラウンさんのペンネームのひとつ。

マーガレット・ワイズ・ブラウンさんは、ニューヨークの児童書を扱う出版社”スコット社”の初代編集者であり、天才と呼ぶべき絵本作家のひとりです。

生前、彼女は”ゴールデン・マクドナルド”に加えて”ティモシー・ヘイ”と”ジュニパー・セージ”というペンネームも持ち、本名の”マーガレット・ワイズ・ブラウン”とあわせて4つの名前で活躍されました。

100冊以上の著書を持つ彼女の代表作と言われる作品は『おやすみなさい おつきさま』や『たいせつなこと』そしてこの『ちいさな島』です。

そんな『ちいさな島』の美しい言葉にピッタリの絵を描かれているのが、同じくアメリカ出身のレナード・ワイスガードさん。

ブルックリンで商業美術を学び『the New Yorker』や『Harper’s Bazzar』などで美術担当をされていたスゴイ経歴を持っています。

マーガレット・ワイズ・ブラウンさんとは”コンビ”として知られ、一体いくつ共作されているのかは定かではありません。

ブラウンさんの代表作にあげた絵本のうち『たいせつなこと』もレナード・ワイスガードさんの絵が使われており、この2冊がふたりの共作というだけでも、このふたりがとてつもなく強力な天才コンビだということがお分かりいただけるのではないでしょうか。

さらに『ちいさな島』の翻訳は、谷川俊太郎さん!

東京都出身の男性で、詩人として有名になった後、作詞や脚本家など様々な分野で活躍する超天才。

そして谷川さんといえば、好学社から出版されているレオ=レオニさんの作品を翻訳されるなど、絵本の翻訳家としても有名です。

谷川さんのWebサイト谷川俊太郎.comを見ていると、谷川さんはいつまでも現役でお仕事をされている方だな〜と感じます。

ほんとうにスゴイ!

そんな日米の天才たちが作った絵本『ちいさな島』素敵じゃないわけありません!

ほんとうに読んで欲しいです。

誰もが惹きつけられる絵本

この絵本を読んで初めて、英語で書かれた原文のまま絵本を読んでみたいと感じました。

もちろん谷川さんの翻訳で十分すぎる程、素敵な絵本です。

でも、もし自分が英語をスラスラ読める人間だったならば”ブラウンさんが実際に書かれた文章”にも触れてみたいと思ってしまった。

それだけ魅力的で、きっとどの世代の人々でも同じように惹きつけられてしまう絵本です。

言葉だけではなく、絵もほんとうに美しい。

色彩が美しいのはもちろん、全体的に絵が”ちょうどいい”です。

文章に対して絵が、多すぎもせず少なすぎもせず、派手すぎず地味すぎず、いちばん”ちょうどいい”絵の量で描かれているという印象を持ちます。

そのおかげでとてもスムーズに言葉を感じとることができます。

どのように感じられるかやどんな時に読みたいかは人それぞれかと思いますが、ぜひblueなときにも読んでみてください。