インドのバター食べてみたい!『ちびくろ・さんぼ』文:ヘレン・バンナーマン/絵:フランク・ドビアス/訳:光吉夏弥(瑞雲舎)

ちびくろ・さんぼ 《happy》楽しくなりたいとき
画像出典:瑞雲舎

『ちびくろ・さんぼ』のお話については、色々なご意見があります。

この紹介記事の中でも過去に絶版となった理由についても書きました。

ただ、記事の内容としては単純にひとつの絵本に対する、ひとりの人間が持った感想として読んでいただければ幸いです。

あらすじ

ある日、小さなかわいい男の子のさんぼは、お父さんとお母さんから素敵な服やくつ、そして傘をもらいます。

とても立派な姿になったさんぼは、ジャングルにお散歩へ。

すると、次々に虎が現れて、食べられそうになってしまいます。

しかし、さんぼは立派な服やくつなどを手放すことでなんとか生き延びることに成功。

最終的に虎はありえない形でいなくなり、さんぼは虎に渡してしまった服やくつをしっかり身につけて帰り、最高のハッピーエンドを迎えます。

あ〜本当にさんぼは頭がいい!

虎もなんとも憎めない描写になっています。

この物語でわたしがいちばん好きなのは、最後のシーンです。

とても美味しそうで、日本語訳が面白い、素晴らしい終わり方になっています。

そんなあらすじのお話『ちびくろ・さんぼ』は実は一度絶版になりました。

どのように復刊を迎えたのか『ちびくろ・さんぼ』の歴史について、簡単に紹介します。

絶版から17年経ち復刊へ

もともとの『ちびくろ・さんぼ』は、ご自身の子どもたちのために作者のヘレン・バンナーマンさんが手作りされた、インド人少年の絵本です。

そのため、最初は絵も文もヘレン・バンナーマンさんのものが使われていました。

基本的なお話はあらすじに描いたものと同じようですが、出版され人気になると、少しずつ内容の違ういろいろなバージョンが世界中で登場しています。

日本でも『ちびくろ・さんぼ』は1953年に岩波書店から最初に発売され、その後たくさんの出版社から絵本が出版されました。

そして1988年に突然絶版を迎えます。

その理由は、さんぼという名前が黒人差別に該当するなど、黒人差別に反対する団体からの抗議があったためです。

「そのような抗議があった絵本復刊して大丈夫なの?」というご意見もあると思います。

しかし、瑞雲舎は以下のように分析。

2005年に『ちびくろ・さんぼ』を復刊しています。

「さんぼ」が差別的だとする人たちは、それがインド人の一般的な名前ではなく、「じゃんぼまんぼ」も”mumbo jumbo”(ちんぷんかんぷん)という表現につながるなどと主張する。だが、「さんぼ」という名前自体は、北インドやチベット地方ではよくあるもので、「優秀な よい」という意味であり、まさに窮地を切り抜けた男の子にふさわしい。お母さんの「まんぼ」は「豊かな たくさんの」、お父さんの「じゃんぼ」は「大世界 やさしい」という意味で、これもよく考えられた素敵な名前だ

詳しくは瑞雲舎のほんだよりをご覧ください。

表現とは、ほんとうに難しいですね。

『ちびくろ・さんぼ』に限らず、本を読んで持つ感想は人それぞれです。

本作りのときに、すべての方に配慮していくのは至難の技でしょう。

わたしは大した知識もなく、何が良くて何が悪いとは言えませんし、そもそもあまり分からない部分が多いです。

しかし、瑞雲舎のほんだよりにも書かれているように、何の説明もないまま本が消えてしまうという状況は、なくなっていってほしいと感じます。

なにはともあれ『ちびくろ・さんぼ』が復刊してくれたことは、ほんとうに嬉しいです!

最後まで笑わせてくれる絵本

『ちびくろ・さんぼ』は文字が多いのに、あっという間に読めてしまいます。

つまり、それだけ魅力に溢れているということです。

魅力について3つに分けてお伝えします。

原色が素敵な色彩

まず、色彩です。

絵は”白・黒・赤・青・黃・紫・緑”の7色の原色で描かれ、淡い色は一切ありません。

原色だけで描かれているとなんだか目がチカチカする絵になりそうですが、そのようなことは全くなく、とても美しい。

文字が多いためか、絵がページの全面にくることは少なく、背景の白と原色の絵がちょうどよいバランスで描かれています。

絵や文字の絶妙なバランス

次に、絵や強調したい文字のバランスが絶妙です。

先ほどもお伝えしましたが『ちびくろ・さんぼ』は絵本の中では文字が多く、絵は挿絵のような描かれ方をしています。

そのため、バランスを良くするために、左右のページにそれぞれ絵があることが多くて素敵です。

たまに「この絵は、バランスを取るために描いたんだろうな」と思うようなお話には一切出てこない猿の絵などもあり、ほっこり。

特に強調したい音を表現している文字が最高です!

そのような文字は少ないのですが、斬新な配置で思わず笑ってしまいます。

さらに、その配置にすることで状況が分かりやすくなり、一石二鳥!(笑)

声に出したくなることば

最後に、翻訳されたことばです。

もう、ほんとうに素晴らしい!

つい声に出して読んでしまいます。

虎の「ちびくろ・さんぼ!おまえをたべちゃうぞ」というセリフが可愛くて、悪いやつなのに憎めなかったり。

さんぼの「みみにはけばいいですよ」に対して、虎の「な、なるほどね」というセリフの流れも深刻な状況を感じさせない面白さがあります。

でもやっぱり最後のシーンがいちばんです。

それは「けれどもちびくろ・さんぼは、なんと百六十九もたべました。とてもとても、おなかがすいていたのでね」という訳。

これで絵本も終わりなんです。

とても素晴らしい。

 

なんとも言えない言葉…さらにそこに美味しそうな絵が加わることで、最高のハッピーエンドだと感じることができます(笑)

ぜひ皆さんもこの面白さと、わいてくる食欲を感じてください!

復刊絵本『ちびくろ・さんぼ』オススメです。