ふく、ぬげなくてもなんとかなるかも?『もうぬげない』作:ヨシタケシンスケ(ブロンズ新社)

もうぬげない 《daze》ボーっとしたいとき
画像出典:ブロンズ新社

いまや大人気絵本作家となったヨシタケシンスケさんの絵本です。

タイトルの通り、子どもの服が脱げなくなってしまうお話。

お母さんに「おふろにはいろう」といわれたぼく、すこし抵抗したせいで脱がされた服が引っかかり、脱げなくなってしまいます。

表紙の絵にあるようにぼくは、手を上げたまま、お腹が出たまま、服で視界がふさがれたままの姿でしばらく過ごすことに。

そしてこの、服が脱げなくなってしまったことでぼくは「もしずっとこのまま服が脱げない状態で、喉が乾いたら…」といったような困った事態やその解決策を考えたりしてゆくのです。

「お母さん、放置でいいのですか?」ということはさておき(笑)

最後はギャグ漫画かのような秀逸なオチ、笑わずにはいられないです!

作者のヨシタケシンスケさんが描く絵本はどうしてこんなにも人気なのでしょうか、その人気の秘訣について考えてみましょう。

みんなの”あるある”+ヨシタケさんの発想力

ヨシタケシンスケさんといえば、絵本デビュー作『りんごかもしれない』でいきなりMOE絵本屋さん大賞の第1位を獲得したすごい方です。

そしてヨシタケさんの人気の秘訣は、その”発想力”が大きいでしょう!

この絵本のような場面、実際に経験したことがある方も多いのではないでしょうか。

お母さんの立場で「子どもがお風呂に入りたがらない」「一人でできるといって言うことをきかない」だとか。

子どもの立場で「なんでも指示してくるおかあさんに対抗したい」「もう小さい子どもじゃないんだから、やめて」などなど。

わたしも小さい頃、一人でいけると言った夜のトイレで、結局怖くなって母を呼んできたことがあります。

しかし、この場面を切り取ってお話を作るというのは、なかなか考えつきません。

その発想こそが、ヨシタケさんの大きな魅力だと思います。

さらに「もし服が脱げなくなったら…」の発想も面白い!

ちゃんと子ども目線なのも素晴らしい!

冷静に考えれば、服が引っかかったままで放置されることはまずないでしょう。

でもその不思議な場面をかわいらしく、面白い絵本にしてしまう…天才ですね。

みんなのあるあるにヨシタケさんの発想力が加わるとこんなにも素敵な絵本になるんですね。

この子は何歳なのか?

絵はほんとうに可愛らしく、子どもらしい動きのよく分かるものになっています。

動きが描かれることで、お話がテンポよく進んでいき、笑いながらあっという間によみおえてしまう一冊でしょう。

そしてわたしが考えるこの絵本の一番のセールスポイントはセリフです!

”ぼく”が主人公ということで、しっかりと”ぼく”目線でセリフが考えられています。

絵本のテーマもそうですが、ヨシタケさんの凄さは、子どもの目線を持っていることではないでしょうか。

そして子ども目線がセリフに一番出ていると思います。

「ぼくは じぶんでぬぐ! っていったのに」というセリフなど、子どもの頃に自分も言ったな〜というものがひとつはあるでしょう。

しかし、その子ども目線とは真逆のなんとも大人びた雰囲気もただよいます。

たとえば「でも、まえはうっすらみえるし なんとかなりそうなきもするね」

まるで人生経験が豊かな年配の方のようなセリフです。

なんたる貫禄でしょう。

このチグハグ感も絵本の面白さにつながっていると思います。

みんなの共感のなかに小さなファンタジーが入った、頭を使わずに楽しめる絵本です。

そして、読めばきっとクスクスと笑ってしまう一冊でしょう。