おとこの子の不思議なさんぽ絵本。
楽しいけど、ちょっぴり怖いです。
あらすじ
おとこの子が森の中を、さんぽ。
ラッパを吹きながら、さんぽ。
そのうちに、動物たちがどんどん後をついてくるようになります。
「なんで?」ということは考えてはいけないです。
しかしながら、ほんとうに不思議なほど彼のラッパの音は動物を集めます。
さんぽしてはついてくる動物たちが増え、それによってまた集まる動物たち。
そして休憩をはさんで、”ハンカチ落とし”やら”ロンドン橋おちた”やらであそび、かくれんぼすることに。
するといつの間にか、お父さんが迎えに来て…というお話です。
なんだか、ダークファンタジー感もでているこの絵本の作者はどんな方なのでしょうか。
そしてものすごく気になるネーミングの”ロンドン橋おちた”とはどんな遊びなのでしょうか?!
アレと同じ遊びだった!
マリー・ホール・エッツ
作者のマリー・ホール・エッツさんは、アメリカ出身の女性です。
『クリスマスまであと九日ーセシのポサダの日』(冨山房)でアメリカでその年に発行された絵本のなかから、もっとも優れた絵本に送られるコールデコット賞を受賞。
それ以外にも、表紙が印象的な絵本『わたしとあそんで』や『ペニーさんと動物家族』など、たくさんの絵本でコールデコット賞を受賞されています。
今回の『もりのなか』の絵もそうですが、版画のようにも見えるモノクロで描かれた絵本を多く出されている方です。
そしてエッツさんが描かれる絵本には、動物が登場するものが多い!
実はこの『もりのなか』はアメリカでは絶版になっており、日本での方が有名な絵本のようです。
ロンドン橋おちた
絵本にでてきた遊び”ロンドン橋おちた”とは、一体どんな遊びなのでしょうか。
単語だけきくと、すごく怖い感じがします。
しかし、ぜんぜん普通でした。
”ロンドン橋おちた”はイギリスに古くからある童謡で、いわゆる「関所遊び歌」です。
遊び方は、2人の子供が向かい合って手をつなぎ、腕を高く上げ、その中を他の子供が歌いながら通ります。
そして、歌詞の「My fair Lady」のところで腕を上げていた2人が腕を下ろし、通っていた人を捕まえる。
日本でいうと”通りゃんせ”とほぼ同じですね。
日本と外国の似た遊びってこのようにたくさんありますが、やっぱりどちらかの国から伝わった遊びなのでしょうか。
それとも、単純にそれぞれの地域で子どもたちが同じような遊びを思いついたとか…気になります!
ダークファンタジー?
この絵本はふつうに読めば、ただ不思議でかわいいお話です。
しかし、ちょっとひねくれた心を持っていると、怖い想像が…
「ほんとうは男の子を食べるためについてきたんじゃないの?」
「男の子を森で迷子にして、そのまま…」
「最後にはおとこの子も動物に?!」
などと考えてしまいました…全然ちがいましたが(笑)
基本的には、ファンタジーかつ動物がでてくるお話なのですごく可愛くて楽しいです!
邪な目を持ってさえいなければ「かわいい絵本だな〜」で終わります。
でも、やっぱり考えてしまう!
このモノクロで描かれた素敵な絵が、その考えを強くするのでしょうか?
絵もフォントもかわいいのに、絵の白黒がちょっとさみしさをかもし出します。
このおとこの子が「本当はちょっとさみしいのかな」と、余計な心配まで感してしまう始末(笑)
わたしがちょっとさみしいと感じるだけで、絵もほんとうに素敵なのは間違いないです!
黒という強い色なのに、クレヨンのような線がやわらかい印象で、シンプルな黒い線よりも可愛らしさや優しさを感じます。
また、絵と余白の境目があいまいに描かれていて、まるで夢のなかにいるようです。
不思議でちょっとこわいところもあるけど、とても素敵な絵本『もりのなか』皆さんはどう感じられるでしょうか。
ぜひ読んで確かめてみてください!