グリム童話のなかのひとつ”熊の皮”というお話に、スイスの画家フェリクス・ホフマンさんが絵をつけた作品です。
戦争が終わり、無職になってしまった若い男性兵隊のお話。
ものすごく現実的な設定が絵本を読み始めてすぐに出てきて、血の気が引いていきました。
登場人物のほぼすべてが人間の大人で、主人公の兵隊の立場だけでなく、さまざまな人物の立場にたつことができる絵本です。
そして、フェリクス・ホフマンさんの繊細な絵。
とても美しく、絵も現実的です。
登場人物の目がすごく大きかったり小顔だったりはせず、しっかりと人間を描いているという印象をうけます。
一般的にファンタジーの要素が入った可愛らしい絵の多い絵本にしては珍しい”現実的な絵”が、ちょっと不気味なグリム童話の挿絵にピッタリです!
このゾッとする感じは、さすがグリム!
しかしながら、そもそもグリム童話とはどんなものだったのでしょうか、見ていきたいと思います。
昔話ってすごいもの
グリム童話とは”グリム兄弟”こと、兄のヤーコプ=グリムと弟のヴィルヘルム=グリムのふたりが集めたドイツの童話集のことです。
1812年にグリム童話の第1版が出版され、その後に何度も手を加えられました。
最終版には210話のお話が収められ、有名なものには『ブレーメンの音楽隊』や『赤ずきん』『白雪姫』などがあります。
もともと兄弟は大学で法律を学んでいました。
しかし、とある歴史法学者の大学教授と出会ったことがきっかけで、ドイツ語の歴史や文学を学び始め、童話の収集を開始したということ。
童話・民謡・昔話といったものは、その時代時代でいろいろなお話が存在していたと思います。
でも、口頭で語り継ぐだけでは結局その土地にしかひろまりません。
グリム兄弟のような誰かが自ら文字におこし、それをまただれかが世にひろめる努力をして…ということが何度もあって初めて、日本でもドイツの童話が読めるようになっているんですよね。
私たちが昔話を読めるようになるまでの過程を考えると、なんだか感動してしまいます。
昔から末っ子がいちばん要領がいい説はあったのか?
この絵本は、いろいろな登場人物の立場になって「自分だったらどういった行動にでるか」ということを考えられます。
なかなかこの絵本に出てくる人たちのような行動は取れない…特に三姉妹の末っ子の行動は絶対に取れないです。
そんなこと言えないし、待てない…あとそのお酒飲みたくない!
でも結局その人がいちばん賢かった。
『さんびきのこぶた』もそうですが、やっぱり昔から末っ子は要領がいいというのは定説だったのでしょうか。
わたしは末っ子じゃないから要領がわるいのか!
なんて…(笑)
脱線しましたが、細かい描写をひとつひとつを現実的に想像してみると「あ~ムリムリ」となってしまうことが多かったです。
絵のおかげで、簡単に想像ができてしまうことも、この絵本の魅力であり、恐ろしさなのかなと思います。
ゾッとするくらい現実的な絵本『グリムの昔話 くまの皮をきた男』を、ぜひ読んでみてください。
ちなみに、インターネット上には原作のグリム童話『熊の皮』の翻訳しているWebサイトもいくつかあります。
絵本の終わり方にはどうやら続きがあるようです…そちらもゾッとしますので、気になる方は探してみてください。