すごーく普通のおじさんが、転んだり汚れたりと”へろへろ”になってしまうツイてない1日を描いたお話です。
お友達に書いた手紙をポストへ投函するために出かけたおじさん。
この手紙を書き上げ、届いたときの友人の表情を想像してポストへ向かおうとした瞬間こそ、この日いちばん幸せだったでしょう。
なぜならおじさんのツイてない1日は家をでてすぐに始まるからです。
その後、全部で5つものツイてない現象に見舞われ、心も体も心底”へろへろ”になってしまいます。
数多くのツイてない現象を味わったおじさん、最後の最後にそんなおじさんの身に起きることとは?!(笑)
「なんだか今日はツイてなかった…」と思う疲れた日に読んだら、泣いてしまう絵本です。
でも、そうじゃなければおじさんの巻き込まれるツイてない現象が「そんなことあるかね?!」というもので、ついつい笑ってしまう絵本。
この面白さの源は、一体どこからやってくるのでしょうか。
その謎についても解説していきます。
村上春樹さんが惚れこんだ才能
作者の佐々木マキさんは、神戸県出身の男性。
著書には『やっぱりおおかみ』や『ムッシュ・ムニエル』シリーズ『ぶたのたね』シリーズといった、クスクス笑ってしまう絵本が多いです。
今や絵本作家として有名な佐々木さん、実は漫画家としてのデビューが先でした。
そのデビュー誌は、青林堂が刊行していた『月刊漫画ガロ』です。
ちなみに『月刊漫画ガロ』とは『カムイ伝』の白土三平さんや『ゲゲゲの鬼太郎』の水木しげるさんなどが活躍した、伝説的な漫画誌。
そしてそんな佐々木さんの才能に漫画家時代から惚れ込み、自らの処女作である『風の歌を聴け』の表紙を依頼したのが村上春樹さんです。
その後村上さんは、佐々木さんと一緒に『羊男のクリスマス』や『ふしぎな図書館』といった大人向け絵本を制作されています。
しかしながら、佐々木さんや長新太さんなど、どうして漫画界出身の方の絵本はこんなに癖になるんでしょう。
絶妙なヌケ感。
ある意味オシャレな絵本作家さんでもあります。(笑)
きっと誰もがあるある
この絵本では、ツイてない1日を送る”おじさん”が描かれています。
しかし、老若男女問わず「あるある〜」と思ってしまう。
生きていれば、男性も女性も大人だって子どもだって「なんなの今日!?」と感じる1日は経験があるはずです。
わたしも今までのツイてない1日を合計したら1年以上あると思います。
そんなとき思っているのは「どうして?」です。
なぜ自分ばかりがこんなに辛い目にあうのか、そう感じながらも我慢するしかないですよね。
このおじさんも心の中で、ずっと思っていたはずです。
そのシンドイ気持ちが、些細なきっかけで溢れ出してしまうということも、すごく共感できます。
この絵本の26ページ以降は、それまで楽しく読んでいた方でもちょっと泣けてくる描写です。
そんなへろへろおじさんに「最後なにが起こるのか」は、ぜひ絵本を読んでお確かめください。